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こじらせ女子大生が暗号通貨・ブロックチェーンや中国についてゆるーく語ります。

中国・雄安新区のブロックチェーン事情

こんにちは、こじらせ女子(@icotaku_utgirl)です。
先日、北京・上海・杭州などの大都市以外でブロックチェーンに注力している地域として、中国のハワイ・海南省を紹介しましたが、今回はもう一つ、北方の雄安新区を紹介します。

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雄安新区は北京の南、河北省の中部に位置する地域で、改革開放のもと国家主導の開発が進められた深セン上海・浦東地区に並び、国家戦略の中でも最重要地区に位置付けられています。その中でAIやビッグデータクラウド、そしてブロックチェーンなどの先端技術を活用し、スマートシティを建設する構想もあります。

雄安新区とは

雄安新区(雄安は中国語で「ションアン」と読む)は、北京・天津の105kmほど郊外、河北省・保定市の東部30kmに位置する、雄県・容城県・安新県とその周辺地区を含む地域を指します。「雄安」の名前は雄県と安新県から来ています。

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雄安新区の位置(链视界より)
雄安新区建設により、交通渋滞や不動産価格の高騰など「大都市病」を引き起こした北京の首都機能を分散させるとともに、これまで経済成長が鈍化していた河北省の発展を促し、「京津冀(北京市天津市・河北省)」三地区間の繋がりを産業・経済面で強化しながら調和の取れた発展を目指す、としています。これは改革開放期の深センや上海の浦東新区に続く国家級の開発プロジェクトで、「千年大計、国家大事(千年に一度の国家の大事)」とも言われています。

雄安新区の成立は2017年4月に正式に発表されましたが、その構想は2014年にまでさかのぼります。
2014年2月、京津冀共同発展計画(北京市天津市・河北省の三地区の共同発展を目指す計画)」が重要戦略として中央政府に採択されましたが、この時、北京の首都機能を河北省など周辺地区に分散させる構想が生まれました。この首都機能の移転先が、2016年3月頃には河北省の雄安新区付近に定まりました。

2017年2月には、習近平国家主席が雄安地区の一角である新県を自ら訪問し、都市建設に関する意見交換会に出席、そして2017年4月1日に中央政府が雄安新区の成立を正式に宣言するに至ります。

最先端のテクノロジーを駆使したスマートシティを建設する構想もあり、BATをはじめとするテック企業が拠点を置いて様々な実証実験を進めています。例えばBaiduの自動運転車両、JDの自動配送ロボット、無人スーパー、そして顔認証を使った未来型ホテルも見られます。

diamond.jp

雄安新区で進められているブロックチェーンプロジェクト

スマートシティ計画にはブロックチェーンを活用する構想も盛り込まれており、すでにブロックチェーンを使った二つのシステムが開発されています。
ただしブロックチェーンと言ってもコンソーシアムチェーンのように、取引当事者のみがノードとなり、契約締結や代金の支払いなどのトランザクションをPBFTのようなアルゴリズムに従ってバリデートし、互いに監視しあいながら不正を防止する仕組みであることが分かります。

ブロックチェーンベースの賃貸物件ポータル

物件やオーナー、借り手、契約の情報をブロックチェーンに記録し、当事者間での共有・閲覧が可能なシステムです。これにより、オーナーと借り手との間でお互いを信頼しにくいという問題のために煩雑な手続きが発生し、物件を見つけてから契約成立までに時間と手間がかかる、という問題の解決を図ります。
この賃貸物件ポータルは2018年2月にローンチし、Alibaba傘下のAnt Financial中国建設銀行(中国の四代商業銀行の一つ)、链家(中国の大手不動産仲介業者で、分譲・賃貸物件のポータルサイトも展開)も参画しています。
ただしポータル自体まだ一般公開されておらず、詳細な仕様は不明です。

ブロックチェーンベースの建設マネジメントシステム

インフラ事業において、予算配分、関係者間(ディベロッパー-ゼネコン-下請業者-現場作業員)の契約内容および工事代金/給与の支払い情報などの情報を記録し、関係者間で共有・閲覧できるブロックチェーン上のシステムです。
建設業界ではディベロッパーから建設工事を入札したゼネコンが下請けに工事を外注し、その下請けがさらに工事を外注するという「多重下請け」という仕組みが存在します。この時、ゼネコンに工事を全て一任し、ゼネコンがスケジュールの管理や資材調達といった取りまとめをするのですが、工事を発注したディベロッパーにとっては実際にかかっているコストが不透明な状態になります。中国でも日本でも、実際にゼネコンが資金を横領したという事件が相次いでいます。
この建設マネジメントシステムでは、工事に関わるあらゆる情報を改ざん不可能な状態でブロックチェーンに記録することで、このような不正を防いでいます。
このシステムは2018年8月にはローンチしており、「千年秀林」と呼ばれる植林事業や容城県東部の治水工事、黄河流域のダム建設など、雄安新区で進行している計10億元(160億円)規模のインフラ事業で利用されています。
この中国語の動画では、システムのUIやシステムを利用しているプロジェクトの現場で働く人の反応を見ることができます。
www.youtube.com

二つのプロジェクトの他にも、雄安新区政府はTencentと合同でFintechラボを設立し、その取り組みの一貫としてTencent Cloud上のBaaS(Blockchain-as-a-Service)を現地の民生や行政、民間企業の事業に応用していく計画があります。
さらに2018年7月には、雄安新区の開発を担う国営企業中国雄安集団と業界を代表するブロックチェーン企業・ConsenSysが北京で会談を実施、ブロックチェーン技術をスマートシティ建設にどう応用するかに関して意見交換を行い、MOUを締結しました。

ブロックチェーン産業育成をリードするキーパーソン

雄安地区のブロックチェーン産業育成を担うのが、党工委書記として雄安新区プロジェクトの責任者を務める陳剛氏(チェン・ガン)です。

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陳剛(链视界より)
彼は雄安新区に赴任する前2013年6月〜2017年5月にかけて、南西部の貴州省で省常務委員と省都貴陽市の党委書記とを兼任していました。
貴州省は、数年前まで中国の最貧省の一つに数えられるほどでしたが、冷涼な気候と安価な土地代・電気代を強みに数々の巨大データセンターを誘致、その結果データの活用を狙う企業も集まるようになり、ビッグデータ産業が急速に発展しました。その中で陳剛氏もとあるIT工業団地の建設に関わったといいます。将来有望な政治家を発展途上の地方に派遣して鍛錬する、またある地方で成果を出した政治家を他の地方に派遣してその手腕を発揮させる、といったことは、中国では一般的な地方経済発展の策略です。

彼は貴州省在任当時からブロックチェーンにも着目しており、2016年12月に発表された政府公式レポート『貴陽におけるブロックチェーンの発展と応用(贵阳区块链发展和应用)』の編集を指揮したのも彼だと言われています。
また、Fintechやビッグデータ関連のカンファレンスではブロックチェーンの意義を繰り返し語っています。2017年5月に貴陽市で開催された中国国際ビッグデータ産業展覧会では、「主権ブロックチェーン(主权区块链)」の概念を引用しながら次のように述べています。 「主権ブロックチェーン」は前述の『貴陽におけるブロックチェーンの発展と応用』の中で提唱された、ブロックチェーン技術は国家主権の枠組みの中で発展していくべきだとの考え方を指します。(批判も多いですが非常に中国的な考え方です...)

我们认识到区块链是一种集成技术,是一场数据革命,是一场秩序重建。而我本人有一个观点,区块链更是一个时代的拐点。主权区块链是将主权国家的规制理念植入技术治理之中,从而把技术构架和制度运作有机结合在一起。简单来说,主权区块链的基础是区块链,它完美的将技术创新和制度重构融为一体,是法律规制下的技术之治。主权区块链的发展符合内外因相互作用的基本规律,我们认为它有非常现实的当下意义。

我々は、ブロックチェーンは一種の統合技術であり、データ革命、そして秩序の再構築であることを認識しています。そして私個人は、ブロックチェーンは何よりも時代の転換点だと考えています。「主権ブロックチェーン」は、主権国家の規制概念を技術的ガバナンスに組み込み、技術的枠組みと制度運営とを有機的に組み合わせることを指します。簡単に言うと、技術革新と制度再建の統合、そして法規制の下での技術による統治が、主権ブロックチェーンの基礎となるのです。主権ブロックチェーンの発展は、内外要因の相互作用という不文律に即したものであり、実に現実的な意味を持つと我々は考えています。

総括

いかがでしたでしょうか?
中央政府が重要戦略と位置づける河北省・雄安新区では、大手テック企業や海外ブロックチェーン企業との協力のもと、政府主導でブロックチェーン技術の活用が進み、それがスマートシティ建設の一翼を担っています。そのブロックチェーン産業育成を担うのは、貴州省で一大ビッグデータ産業の創出に貢献し、ブロックチェーンに深い関心を持つ陳剛氏で、彼が今後どのような政策を打ち出すのかにも注目したいところです。

参考