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こじらせ女子大生が暗号通貨・ブロックチェーンや中国についてゆるーく語ります。

【NHKスペシャルダイジェスト】テクノロジー産業を巡るアメリカと中国の覇権争い

こんにちは。こじらせ女子(@icotaku_utgirl)です。

この記事は1/19の21:00より放送されたNHKスペシャル『アメリカVS.中国 “未来の覇権”争いが始まった』のダイジェスト記事です。
長引く貿易戦争に加え、5Gからの中国製品排除、AI開発競争など、テクノロジー産業における米中の覇権争いが本格化しています。
このようなテクノロジー産業を巡る両国の攻防の最前線を取り上げたのが、この番組でした。

www6.nhk.or.jp

番組ではAlibabaが香港ーフィリピン間でブロックチェーンを使った国際送金を成功させた例をはじめ、中国企業や政府がブロックチェーンをどう一帯一路に組み込もうとしているかも紹介されており、中国のブロックチェーン業界に注目している私個人にとっても非常に見応えのあるものでした。

この記事では、適宜補足もしつつ番組の内容をダイジェスト形式で紹介します。
(全ての内容をカバーできている訳ではありませんが、ご了承ください。)

急躍進する中国の自動運転スタートアップ

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今や自動車メーカーではなくソフトウェア企業が、AI(人工知能)を活用した自動運転自動車を作る時代になりつつあります。自動運転の領域でも、GoogleやTeslaといったアメリカ企業の対抗馬として台頭してきている中国企業が存在します。

中国・深センのRoadstar.AIという2017年4月創業のスタートアップは、創業からわずか1年で自動運転技術キット「Aries(アリエス)」を公開し、シリーズAで約140億円もの資金を調達、レベル4自動運転(特定の場所でシステムが全てを操作できるレベル)の実用化へ向けて開発を進めています。

その急躍進の秘訣は高度なIT人材にありました。Roadstai.aiのメンバーの大部分は、「海亀(中国語で海外帰りを意味する "海帰" と同じ発音)」と呼ばれるアメリカからの転職組で、GoogleやApple、Teslaなど世界最先端のテクノロジー企業で働いた経験を持ちます。彼ら自身は、元の職場から技術を盗んでいる訳ではないものの、当時得た知見を活かして開発を進めているのです。

テクノロジー産業を国家戦略とする中国とそれに反発するアメリカ

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中国は、世界の製造強国の仲間入りを目指して『中国製造2025』を掲げ、その一環で5GやAIなどの次世代情報通信技術にも注力しています。そんな中、アメリカの最先端技術を取り込もうと、中国系資本がシリコンバレーにこぞって押し寄せています。
中国企業が出資または買収の交渉で提示する金額は、アメリカ企業の提示額の数倍になることも多く*1、多くのスタートアップはそれに好意的な反応を示しています。

一方のアメリカ政府は、中国への技術流出は国家の安全保障に関わる問題として、中国企業からのオファーには警戒するよう企業に呼びかけています。実際に、アメリカ政府は2018年10月、半導体や情報通信など27産業を規制対象に外資による対米投資の事前申告を義務付け、中国資本の流入を制限しようとしています*2

しかし、多くのアメリカのテクノロジー企業にとっては、巨額の資金援助や中国市場への進出機会はやはり魅力的で、政府との間に温度差が生じているのが現状です。

ブロックチェーンで加速する一帯一路の金融ネットワーク

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中国では、一帯一路の沿線諸国を取り込む一大金融ネットワークを構築しようとする動きも見られます。その土台となる技術となるのがブロックチェーンです。

アリババがブロックチェーンで構築する東南アジアの経済圏

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2018年6月、アリババ傘下のアント・フィナンシャルは、ブロックチェーンを用いた国際送金サービスを開発、送金実験では約3秒で香港ーフィリピン間の送金が完了しました。このお金を受け取った相手は、フィリピン現地のアント・フィナンシャル提携店舗で現金化できるとのことです。
フィリピンは銀行口座所有率が低いものの、世界各地の出稼ぎ労働者からの国際送金需要も大きく、そのギャップをブロックチェーン技術で埋めようと取り組む企業は少なくありませんが、アリババもその一つです。
決済システムとあわせてEC事業でも、現地のEC企業を買収するなど*3フィリピンをはじめとする東南アジアへの進出を本格化させています。

基軸通貨ドルに支えられた国際金融システムへの挑戦

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エンタープライズ向けにBaaS(Blockchain-as-a-Service)を提供する中国企業・太一クラウド(太一云)には、カザフスタンやポーランドから、ドルに依存しない国際送金システムをブロックチェーンで創ることができないか、という相談が寄せられました。
なお、太一クラウドは日本やグローバルではあまり知られていないものの中国を代表するブロックチェーン企業の一つで、CEOの鄭迪氏は2017年・2018年のダボス会議に、中国ブロックチェーン産業を代表して出席した経験も持ちます。

では「ドルに頼らない国際送金システム」はなぜそれほど重要なのでしょうか。
ドルは終戦以来基軸通貨として特別な地位にあり、原油などの戦略物資はほとんどがドル建で取引されています。第三国同士が原油取引を行う際も、ドル決済である限り、それぞれの国の金融機関が米金融機関に開設した口座を介して決済が行われます。よってアメリカは、一見自国とは無関係な第三国間のドルの流れまでをも支配することができ、有事の際は「ドル決済利用禁止」「米金融機関のドル資産凍結」という手段を駆使することで、好ましくないと判断した取引を差し止めることもできるのです。
基軸通貨ドルを利用したアメリカの経済制裁を逃れようとする各国の動きも、最近では目立つようになっています。例えばイラクは2000年に原油取引をユーロ建に変更したことでアメリカの逆鱗に触れましたし、ここ数年でもアメリカから制裁に苦しむイランやロシア、ベネズエラといった国々は、原油取引をドル建からユーロ建や人民元建に切り替えています。ベネズエラが自国の原油資産にペグされたPetroトークンを発行し原油取引に利用できると謳ったのも、米国が支配するドル決済網を使わない取引を可能にするためでしょう。

カザフスタンのような中国・ロシアとの繋がりも強い資源国にとっても、原油取引においてこれら二国と緊張関係にあるアメリカが支配するドル決済網に頼りきりになってしまうのは避けたいという意図があるのでしょう。
そこで中国は、一帯一路の沿線諸国と共にブロックチェーンベースの国際送金システムを構築することで、基軸通貨ドルを擁するアメリカに支配された国際金融システムに対抗しようとしているのです。これは恐らく各国の金融機関が参画するコンソーシアムの形になると思われますが、今後SWIFTやRippleの強力な競合となる可能性も高いでしょう。

日本の取るべき戦略とは

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このように、AIやブロックチェーンに代表されたテクノロジー産業を巡る米中二大国の対立が激化する中、日本はどのような戦略を取るべきなのか、という問いをもって番組は終了します。

例えば自動運転の領域では、トヨタ自動車が2018年4月、アメリカでの自動運転実験を中断した直後に中国でも自動運転の実験を始める計画を明らかにしており、*4、2018年10月には日中両国の業界団体が、自動運転技術での国際標準策定へ向け提携を結ぶなど*5、日中の結び付きが強くなっています。

歴史を振り返ると、圧倒的な人口と資源を擁する強大国に囲まれた日本は、常に国家の舵取りにおいて難しい選択を強いられてきたように思います。そして21世紀、テクノロジーの進化によりハイポリティクス(軍事・安全保障)ローポリティクス(経済・通商)の境界がますます曖昧になると、一国の産業政策がその国および周辺国の安全保障や外交関係にも影響を及ぼすことになります。よって日本としても、テクノロジー産業振興を図るに当たってより慎重な選択を迫られることになりそうです。

合わせて読みたい

米中の覇権争いについてはMcKinseyのレポート、ドル基軸体制をはじめ、ブロックチェーンを学ぶ上で押さえておきたい国際金融の知識についてはd10n labのレポートを読むと、より理解を深めることができます。ぜひ併せてご覧ください。 www.mckinsey.com

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