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こじらせ女子大生が暗号通貨・ブロックチェーンや中国についてゆるーく語ります。

EUはグローバルオファリングに有利!?STOに関わるEUの証券規制とEU発のプレイヤー

こんにちは。こじらせ女子(@icotaku_utgirl)です。
2018年半ばより注目を浴びるようになったSTO(Security Token Offering/セキュリティトークンオファリング)ですが、世界の中でも特にアメリEUで、発行プロトコルや仲介業者、セカンダリー取引所などのプレイヤーが活発に事業を展開しています。
そんな中、アメリカに比べるとEUの情報はあまり出回っていませんが、実はEU統一金融市場を目指す取り組みによりグローバルオファリングがしやすい環境が整っており、今後最も注目すべき市場でもあります。
そこでこの記事ではSTOに関わるEUの証券規制、そしてEU発のSTOプレイヤーを紹介します。

※STOに関わる米国の証券規制についてはCoinchoiceのこれらの連載がわかりやすいです。2つ目の連載はmegan@blockchain researcherさんと私とで共同執筆したものです! coinchoice.net coinchoice.net

EU統一金融市場の形成を目指すMiFID

MiFID(Markets in Financial Instruments Directive/金融商品市場指令)は、EU/EEAの構成国をまたいだ統一金融市場の形成を目的として2007年に施行された法律です。つま理、EU/EEA全体に適用される証券法ということです。
ここでEEA(欧州経済領域とは、28のEU加盟国に加え、EUには加盟していないもののEU単一市場には参加することのできるリヒテンシュタインアイスランドノルウェーの3カ国を加えた領域を指します。

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EEA構成国(青はEU加盟国) Wikipediaより

MiFIDが施行されてから10年後の2017年には、店頭デリバティブなど、取引が急拡大した新たな資産クラスも取り込む目的で、MiFID2(第二次金融商品市場指令)MiFIR(Markets in Financial Instruments Regulation/金融商品市場規則)も施行されています。

MiFIDにおけるセキュリティトークンの位置付け

アメリカでは、Howeyテストを満たすものが証券としてその証券法の管轄下とされていますが、EU/EEAではFinancial Instruments(金融商品がMiFIDの管轄下とされ、その中身も具体的に定義されています。つまり下記のFinancial Instruments(金融商品)に該当するトークンがセキュリティトークンとみなされ、これを扱う業者は適切なライセンスを取得した上で規定に従った取り扱いが求められることになります。

Financial Instruments(金融商品)とは (一部抜粋)

  • 譲渡可能証券:株式・債券

  • マネーマーケット商品

  • 集団投資スキーム:ファンドの持分

  • オプション、先物スワップ、その他証券・通貨・金利コモディティより派生した派生商品

  • その他排出権など

よってセキュリティートークンの大部分は譲渡可能証券(株式型・債券型)または集団投資スキーム(ファンドの受益権)に分類されます。

STO実施時の目論見書に関わる規定とライセンス

目論見書に関わる規定

公募の場合は、EU/EEA構成国のいずれかの規制当局に目論見書を提出し、他に販売を希望する周辺国に通知することで、複数国でのオファリングが可能です。この目論見書に関する規定は、Prospectus Directive(目論見書指令)で別途定められています。2019年の法改正ではこの目論見書提出プロセスが簡略化される見込みとのことです。

アメリカと同様に調達金額や販売人数などに上限を設ければ目論見書の提出が免除されますが、この免除規定はEU/EEAの中でも国によってバラバラです。
例えばエストニアの証券法で定められている免除規定は以下の通りです。

  • 適格投資家(Qualified Investor)のみが対象

  • 1国における非適格投資家の購入者が150人未満

  • 1人あたりの購入額が10万EUR以上

  • 1国における合計調達金額250万EUR未満

2019年度の法改正では、合計調達金額が800万EUR未満であれば、目論見書提出の必要があるか各国規制当局が任意に決められるようになる見込みです。よって、この時目論見書提出の必要がないと判断した国でのみ販売を行えば、目論見書なしでも複数国でのオファリングができるようになります。

ライセンス

EU/EEAでセキュリティトークンの販売および二次流通を行うのにあたり必要となるライセンスは以下の二つです。

  • Investment Firm(投資会社)アメリカでいうBroker Dealer(仲介業者)に当たる。

  • Mutual Trading Facility(多角取引システム) : Investment Firm(投資会社)またはMarket Operator(市場運営者)によって運営される私設の取引所で、アメリカでいう Alternative Trading Systemに当たる。

販売および二次流通で複数国の投資家にサービスを提供したい場合、EU/EEA構成国のいずれかでライセンスを取得したうえで、その国の規制当局に通知をすれば良いことになっています。

なお二次流通取引所の場合、セキュリティトークンを購入するための基軸通貨としてBTC、ETHやStable Coinを取り扱うケースも考えられますが、その場合エストニアジブラルタル、マルタなどの国では、別途仮想通貨取引所ライセンスや仮想通貨関連事業者ライセンス(名称やスコープに入る業態は国によって異なる)を取る必要があります。実際に、後ほどEU発のプレイヤーで紹介するGBXとDX.Exchangeはそれぞれ、ジブラルタルエストニアでライセンスを取得済みです。

以上のように、目論見書の提出もライセンスの取得も、まずEU/EEA内の一国で行ったうえで他の国の規制当局に通知すれば、全域でセキュリティトークンの取り扱いができるようになっています。なお、金融機関が域内の一国で事業の認可を得ると、新たに認可を受けることなく域内の他国でも事業活動が可能になるこの制度はパスポート(Passporting)と呼ばれ、MiFIDのもと規制の調和が目指されているEU/EEA独自の制度となっています。

EU発のSTOプレイヤー

ここではEU発の主要なSTO関連企業を紹介します。

発行体

  • NeuFund(ドイツ):セキュリティトークン発行サービス。二次流通を見据えマルタ証券取引所・Binanceと提携。自身もSTOをし、他にもいくつか独自トークンを発行している。なお発行サポートのみ提供しているため、Investment Firmのライセンスはなし。
    NeuFundについては平野淳也さんのサロンで詳しいレポートが配信されているので、そちらも併せてご覧ください。 junyahirano.com

  • DESICOリトアニア):セキュリティトークン発行サービス。2018年10月にリトアニアの金融仲介業者を買収し、Financial Brokerage Licenceを取得。自身もSTOで資金調達を行った。

  • TokenizEUエストニア):セキュリティトークン発行サービス。エストニア、スイス、マルタ、リヒテンシュタインルクセンブルク、オランダでの発行・販売に対応。こちらも発行サポートのみの提供で、Investment Firmのライセンスは保有しておらず、ライセンスを持つパートナーに企業がマーケティング、つまり投資勧誘を行うと見られる。

取引所

このように、セキュリティトークン取引所は必要なライセンスをすでに取得したうえで(または取得予定として)運営されているのに対し、発行サービス提供者は、自身はInvestment Firmのライセンスを持たない場合が多いことがわかります。
これらの業者はMiFIDに忠実に従っているならば、トークンの発行は自社、投資家への勧誘はライセンスを持つ他社、といったように棲み分けをしているはずですが、提携先のInvestment Firmの社名が明かされていない、自社のセキュリティトークンを直に販売するなど、正直グレーなところも多いなという印象です。

したがって、発行体からすればこれらの業者を使って比較的簡単にEU/EEA全域にオファリングができるのは大きなメリットですが、まだ完全に信頼できる業者は出てきていない、というのが現状でしょう。
いずれにせよ、Passportingのメリットを狙ってEUでSTO事業に参入するプレイヤーは増えていきそうですが、これに対しEUや各国の規制当局がどう反応するかは気になるところです。

参考