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こじらせ女子大生が暗号通貨・ブロックチェーンや中国についてゆるーく語ります。

取引所・マイニングに並ぶ主要業態:中国のBaaS企業の実態とは

こんにちは、こじらせ女子(@icotaku_utgirl)です。

中国のブロックチェーン企業と聞いて皆さんはどのような企業を思い浮かべるでしょうか。今や世界最大級の取引所へと成長したBinance・Huobi・OKExやマイニング事業最大手でIPOも検討しているBITMAINが真っ先に頭に浮かんでくるのではないかと思いますが、もう一つ、特に中国のブロックチェーン業界で存在感を発揮している業態があります。
それはエンタープライズ向けのBaaS(Blockchain-as-a-Service)を開発する企業です。

これらの企業が開発・提供しているのは、オープンソースで開発がなされ誰でも台帳の維持・管理に参加できるビットコインイーサリアムのようなパブリックチェーンではなく、ライセンス契約のもと、特定の企業内や企業間連合でプライベートチェーンコンソーシアムチェーンとして利用されることを想定したブロックチェーンインフラです。
また、ブロックチェーン関連の特許申請でアメリカ企業と中国企業が張り合っていることも一時期話題になりましたが、上位にランクインしている中国企業のうちのほとんどが、BaaSの開発を手がける企業でもあります

今回はそのような企業の特徴や実績を概観していきます。

中国におけるパブリックチェーンとプライベート/コンソーシアムチェーン

中国で中央・地方政府および企業、そして教育・研究機関がいずれもブロックチェーンの研究開発に力を入れていることは既に周知の事実でしょう。 元々は2011年頃から一部の技術者たちにビットコインが注目され始め、2013年頃からマイニング機器メーカー(BITMAIN、Canaan取引所(OKEx、Huobi)メディア(8BTC)プロトコル開発(NEOの前身であるAntshares)など、様々な業態のブロックチェーン企業が登場し始めました。

プロトコルの中でも、NEOやTRONのようにパブリックチェーンを開発する企業もあれば、企業向けのプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンに特化する企業もありましたが、2017年9月の取引所・ICO禁止令でトークンの発行が禁止されると、パブリックチェーンを手掛ける企業の中国国内での活動が困難となりました。不特定多数のノードにより台帳が維持・管理されるパブリックチェーンでは、ネットワーク上でやり取りされる価値として以上に、台帳の維持・管理に貢献しているノードに払う報酬としてのトークが必要不可欠であり、取引所・ICO禁止令は、そのトークンを他の仮想通貨と交換したり(取引所)、前もって配布しておく(ICO)ことが国内でできなくなることを意味したからです。
その結果、2017年9月以降の中国発パブリックチェーンは、中国を出て海外でトークン発行を行うようになり、国内での目立った活動を控えるようになりました。(もちろん開発チームを国内に置く、提携先を国内で探すといったことは行われています。)

一方で、台帳の管理者が元々決まっており、報酬としてのトークン発行の必要がないプライベートチェーンやコンソーシアムチェーンは、規制の影響を受ける事なくそのまま国内に残り発展を続けました。ネットワークの分散性を保つため、また国内でトークン配布ができないこともあり、海外マーケティングに力を入れるパブリックチェーンプロジェクトとは対照的に、プライベート/コンソーシアムチェーン開発企業は主に国内のクライアントを相手にしているため、日本含め海外では名前が知られていない企業がほとんどです。

実は中国初のパブリックチェーン として知られるNEOも、その母体企業であるOnChainは、企業向けにプライベート/コンソーシアムチェーンの導入支援を行なっています。元はパブリックチェーンであるAntshares(NEOの前身)の開発に専念していましたが、企業や政府からの需要を受け、各顧客に合わせてプライベート・コンソーシアムチェーンの開発や導入支援を行う企業として、OnChainを立ち上げたという経緯があります。

そして、総合IT大手のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)も、ブロックチェーン領域にも力を入れていることが知られていますが、これらが開発しているのもプライベート・コンソーシアムチェーンとしての利用を想定したBaaS(Blockchain as a Service)です。

なおBaiduが手掛けるBaaS・XuperChainは、今年Q1を目処にオープンソースとなることが予定されています。 これについては以前仕様や応用例を紹介した記事を書いたので、ぜひご覧ください。

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創業数年のスタートアップでありながら華々しい実績を残す企業も

国内で名が知られているBaaS企業は、ほとんどが2014年〜2016年に創業された比較的若い企業ですが、貿易金融証券取引と決済サプライチェーンチェーン・ファイナンス、金融以外では食品トレーサビリティ医療データ管理など幅広い領域で、その業界の大手と提携しながらブロックチェーン技術の導入を進めています。

このような実績が評価され、数億〜数百億円規模の資金調達に成功したり、時価総額が1億ドル以上の「準ユニコーン企業」として認定された企業もあります。
これらの企業は、例えば北京であれば清華大学杭州であれば浙江大学など、拠点がある現地のトップスクールと研究室を立ち上げるなど、産学連携での研究開発にも積極的です。

例えば、以下は杭州市に本拠地を置くHyperChainの顧客・共同研究相手一覧ですが、 中国人民銀行(中国の中央銀行)、中国工商銀行中国建設銀行・中国光大銀行のような国内メガバンク、デビット・クレジットカード大手のUnionPay上海・深セン証券取引所、そしてintelMicrosoftGoogleのようなIT大手の名がズラリと並んでします。
HyperChainは2016年に設立されたBaaS企業ですが、2018年6月にはラウンドBで15億元(約240億円)もの資金調達を行い、「準ユニコーン企業」の仲間入りを果たしました。

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HyperChain 公式HPより

特許取得にも注力

ブロックチェーン領域で、アメリカ企業対中国企業の特許取得競争が激化していることが一時話題となりましたが、この競争に中国サイドで参加しているのも、ほとんどがBaaS提供企業です。
IPR Dailyが発表した2018年度のブロックチェーン関連の特許申請数ランキングでは、アメリカ対中国の様相を呈しているとして話題になりましたが、上位20位にランクインした14の中国企業のうち8社(Alibaba、Tencent、Chain33、RChain、Bubi、YunPhant、SinoChain、OneConnect)が、BaaSを提供している企業です。

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2018年度ブロックチェーン特許申請数(赤字は中国のBaaS企業、IPR Dailyより)

本来オープンソースで開発が進められるべきブロックチェーン領域で、特許取得を目指すのはナンセンスだという意見も存在しますが、そもそもプライベート/コンソーシアム・チェーンとしての利用を想定したBaaSは、誰でも利用できるパブリックチェーンとは異なり企業とのライセンス契約の上で提供されること、さらに様々な業界の顧客の要望に合わせて研究開発を行う中で発明した特殊機能に対する特権を守る必要があることを考えると、これらの企業が特許取得に力を入れるのは当然のことではないかと考えられます。(もちろん、プライベート/コンソーシアム・チェーンとして利用するくらいならブロックチェーンである蓋然性はあるのか、という論点もありますが。)

主要BaaS専業スタートアップの紹介(一部)

では数あるBaaS企業の中でも突出した実績を持つ5社を紹介します。

HyperChain(趣链)

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2016年に浙江大学清華大学出身者らにより杭州で設立。企業向けBaaSとその導入支援を行うほか、ディベロッパー向けのスマートコントラクト開発ツールの提供、NetEaseとの合同事業としてブロックチェーンのオンライン教育コンテンツの配信も行う。前述のように多数の大手金融機関や情報通信大手を顧客に持ち、時価総額1億ドル超の「準ユニコーン企業」でもある。

OnChain(分布科技)

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2016年にNEOのコアメンバーが上海で設立。コアメンバーは2014年前半からパブリックチェーンであるAntsharesの開発を進めていたが、企業や政府のプライベート・コンソーシアムへの需要の高まりを受け、その技術開発や導入支援を行う企業としてOnChainを創業。Microsoftとの電子署名システムに関する共同研究や、ビッグデータ先進地域として存在感を増す貴州省とデジタルIDに関する共同研究に従事し、HyperLedger Fabricにも参画。KPMGのTop50 Fintech Company in Chinaにも選出。(厳密に言えば、OnChainは顧客ごとに開発や導入支援を行う形で、BaaSを提供しているわけではない。)

CryptoApe(秘猿科技)

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2011年よりEthereum開発に貢献してきたエンジニアが中心となり、2016年に杭州で設立。BFT系の独自コンセンサスを実装したブロックチェーン・CITA(Cryptape Inter-enterprise Trust Automation)や、商用のパブリックチェーン・Nervosの開発を手掛ける。研究開発にあたっては、中国有数のメガバンクである招商银行、そして清華大学北京大学といった国内トップクラスの教育/研究機関とも連携。

RChain(瑞链科技)

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NYSE上場企業のXinyuan Real Estateの出資を受け、メガバンやfintechでの豊富な経験を持つメンバーが2015年に設立。BaaSプラットフォームのX-BoltをIBM中国の技術支援のもとで開発。また、金融業界向け(存取宝)、トレーサビリティシステム向け(溯源宝)、及び店舗向けロイヤルティポイントシステム向け(积分宝)と、用途に特化した主力商品を複数展開している。

太一クラウド(太一云)

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2014年、連続起業家でクラウドコンピューティングの領域で突出した知見を持つ鄭迪により設立。BaaSの中でも、知財権保護に特化したもの(公有云)とカスタマイズ可能なもの(企业云)の二種類の製品を提供。後者は株式・債券の取引、信用スコア、IoT、エネルギー、医療、保険など多様な分野への応用が可能。2016年よりHyperledgerプロジェクトにも参画。CEOの鄭は、2017年・2018年に連続で中国ブロックチェーン業界の代表としてダボス会議に出席した経験を持つ。
先日のNHKスペシャルにも、米ドル基軸通貨制度に対抗しうる国際決済システムの構築に協力している企業として登場。

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総括

中国のブロックチェーン企業といえばマイニングや取引所が真っ先に思い浮かびますが、国内ではプライベート/コンソーシアムチェーンとしての利用を想定したBaaSの開発と導入支援を行う企業も多く、創業数年ながら華々しい実績を誇り高い評価を獲得している、という話でした。
中国では取引所の運営やICOによるトークンの発行が禁止されていますが、ブロックチェーン技術自体は中央・地方政府の産業振興策上重要なテクノロジーであり、民間企業もその導入に積極的です。その研究開発や実世界での応用に貢献しているのが、今回紹介したようなBaaS企業なのです。グローバル展開している取引所やマイニング、パブリックプロトコルとは異なり、海外では知名度が高くない企業がほとんどですが、中国ブロックチェーン業界の重要な一角を占める業態として、覚えていただければ幸いです!

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